透明度が高く、レンジ感も優れたスタジオチューニングライクサウンド。現状におけるTinHiFi史上最高傑作のひとつ|中華イヤホン TinHiFi C2 Mech Warrior レビュー

TinHiFi C2 Mech Warrior

TinHiFi C2 Mech Warrior

 

audio-sound Score

  • パッケージ:8.0/10.0
  • ビルドクオリティ:9.0/10.0
  • 装着感:8.5/10.0
  • 高域:9.0/10.0
  • 中域:11.0/10.0
  • 低域:9.5/10.0
  • 歪みの少なさ:9.0/10.0

 

基本スペック

  • 再生周波数:10-20000Hz
  • インピーダンス:32Ω±15%
  • 感度:104±3dB
  • ピンタイプ:2pin 0.78mm

 

 

パッケージ

TinHiFi C2のパッケージは全体として価格の標準以上と言えます。

 

シンプルで無駄がなく、処分しやすく、比較的エコです。もっと解体しやすければもっとよかったですね。

 

パッケージ内容
  • イヤホン本体
  • イヤーチップ
  • マニュアル類

 

TinHiFi C2

 

ビルドクオリティ

ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。

 

非常に美しく頑丈に作られており、TinHiFiの伝統的なIEMからさらに造形はレベルアップしています。本体の造形に限って言えば、$100クラス以上と言われても驚かないでしょう。Tinの技術力が急速に高まっていることがわかります。

 

TinHiFi C2
TinHiFi C2
TinHiFi C2
TinHiFi C2
TinHiFi C2

TinHiFi C2

 

装着感

装着感は良好です。

 

よく造形されていますが、わずかに耳への当たりが強いところがあります。金属シェルのため、耳当たりが固く、重さもあるため、長時間使用でわずかに負担感や痛みが出るかもしれません。

 

TinHiFi C2

TinHiFi C2 Mech Warrior
TinHiFi C2 Mech Warrior
TinHiFi C2 Mech Warrior

 

音質

今回は標準イヤーチップ Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。

 

TinHiFi C2はほぼ完璧にニュートラルなサウンドシグネチャーを持っています。ただし高域と低域の両方でエネルギーはやや弱いため、バランス的には中域寄りになっています。

 

TinHiFi C2 Frequency Response (RAW)

 

TinHiFi C2

 

低域

TinHiFi C2の低域は十分に直線的かつ量的に中域とのバランスが取れており、かなりモニター的に聞こえます。

 

深さは少し物足りないですが、減衰は穏やかでそれほど不足感はありません。ただし低域好きを満足させる水準にはないでしょう。

 

バスドラムは引き締まり感は悪くないように思いますが、重みに少し欠ける印象で、ドンドンではなく、タンタンに近く聞こえます。

 

エレキベースも明るい印象になりやすく、黒さの点でわずかに物足りない可能性があります。

 

逆に言えば、見通し感があり、リズム感はわかりやすいので、少し軽快なバランスで聴きたい人には疾走感のある雰囲気が好まれるかもしれません。

 

中域

TinHiFi C2の中域はサウンドバランスにおいてほぼ完全にニュートラルであるだけでなく、非常に優れた透明度を実現しています。また全体の中でのフォーカス感もよく、解像感も高いので、詳細に聞こえます。

 

ただし、適切な装着感ではディテール感に不足が出やすく、音の輪郭やソリッド感は比較的しっかりしているのに、細やかさに不足が感じられるため、立体感が良好な割に分離感はいまいちという印象になりやすいでしょう。

 

アコースティックギターの質感は非常に自然で、音像のつながりもよく、全体的に一貫性が高いですが、色づきはやや地味です。

 

高域のエネルギーが弱いせいで明度の割に輝度も低いので、やや暗めの空間で中域にスポットが当たっているようなほの明るい印象を持つでしょう。

 

高域

TinHiFi C2の高域は十分な拡張性を備えており、低価格でありながら非常に優れていると言えます。

 

ただし、スピーカー的な定位感を意識して減衰が加えられており、しかもそのエネルギーは高域の大部分において標準量より低く設定されています。そのせいで高域のディテール感は弱く、繊細さに欠ける音になりがちで、スタジオモニターとしてはやや信頼性に乏しい傾向があります。

 

一方で高域の調整は高域に敏感な人にとってはかなりセーフティです。場合によって歯擦音だけはやや強く感じる可能性があるかもしれません。

 

音質総評
  • 原音忠実度:A+
  • おすすめ度:S+
  • 個人的な好み:S+

 

シングルダイナミックドライバーの品質は向上しており、低価格でも非常に良質なサウンドを提供できるようになっています。少なくとも中域にこだわる場合、ダイナミックドライバーが現状で最もパフォーマンスが期待でき、コスト面でも優位にあることは間違いありません。バランスドアーマチュア型が歪みが強いことはもちろん、平面駆動型も透明度に関しては、まだダイナミックドライバーの水準に到達していないようです(例外に近いのはShuoer S12)。

 

そのため、2022年現在のオーディオマニアは実際には最高品質の音質を聴くのに、高いお金を払う必要はありません。少なくとも中域の再現度は低価格のシングルダイナミックドライバーがハイエンドのマルチドライバーハイブリッドを圧倒しています。最近のダイナミックドライバーは中域で非常にピュアな音を実現しつつ、レンジ感の点でも不足はそれほどありません。

 

そのため、レンジや解像度を改善するためにバランスドアーマチュアドライバーを搭載することは、最終的には音を汚す原因になりやすく、細かな欠点をつぶそうとして、より大きな欠点を招く結果になります。つまり、実際には全体のパフォーマンスの悪化につながることが多いです。

 

そういうわけで、現状ではよほどうまくチューニングできないならば(あるいはBAの歪特性をうまくサウンドに織り込めないならば)、ハイブリッドを採用しないでシングルダイナミックドライバーで仕上げた方が高水準のサウンドを実現できるのです。

 

すなわち、下手に1万円以上のハイブリッド構成やバランスドアーマチュア搭載の機種を探すより、ビルドクオリティとサウンドの両面で優れたTinHiFi C2のような5000円程度のシングルダイナミックドライバーの機種を手に入れる方が現状でははるかに幸せになれる可能性が高いです。C2は耳が肥えたオーディオマニア向けに文句なくおすすめできる機種の一つです。

 

音質的な特徴

美点
  • 良好なサウンドバランス
  • スタジオチューニングライク
  • 聴き心地が良い
  • 艶やかなサウンド
  • 優れた原音忠実度
  • 優秀な解像度
  • 透明でクリアな中域
  • 中域への適切なフォーカス
  • 良好なレンジ感
  • スピーカー的な定位感

 

欠点
  • ディテールの不足
  • 輝度の不足
  • 低域は量と深みで低域マニアを満足させる水準にはないと思われる

 

  • さらに詳しいレビュー内容はこちらを参照して下さい。

 

 

総評

TinHiFi C2は非常に低価格で非常に優れたスタジオチューニングライクなニュートラサウンドを提供する、現状におけるTinHiFiの最高傑作のひとつと言っていいイヤホンです。ビルドクオリティの点でもTinHiFiは格段の進歩を遂げており、総じてこの価格でここまでの製品を作れることに驚きを隠せません。